THE MODEL型ビジネスにおける収益力の高め方

私は前職の株式会社エス・エム・エスにて介護従事者の就業/教育支援事業の責任者をしていました。
介護業界に未経験で就業を考えている方を主にwebで集客し、無料で資格の取得と就業支援を行い入社先の介護事業者から紹介料を頂く、というビジネスモデルでした。
集客した就業検討者(リード)に対し主に電話で面談のアポイントを獲得し、面談にて資格取得・転職支援の申し込み獲得後、企業へ紹介し成約を目指すというプロセスでした。

THE MODELで書かれているいわゆるBtoBSaaS事業においてのインサイドセールスを加えた事業モデルと若干条件が異なる部分もありますが、見込顧客獲得→インサイドセールス→フィールドセールス(オンラインセールス)というプロセスで事業を行っていた点は共通しています。
インサイドセールスを加えることにより事業の複雑性は増しますがうまくまわると事業全体の生産性を高めることができます。
私の場合箱物ビジネスであったため出店戦略も加わりさらに複雑でした。
うまくいったこともあれば失敗したこともたくさんありましたが、複雑性の高い環境で成長ビジネスの責任者という多くのことを学べるポジションを与えてくれたエス・エム・エスにはとても感謝しています。
せっかくですのであらためて経験してきたことを振り返り、THE MODEL型ビジネスにおける収益力の高め方について整理しておきたいと思います。

1.ボトルネックの特定と解消

THE MODEL型ビジネスにおいては「ボトルネック工程は常に1つ」という考え方がとても重要です。
集客~受注までの間、複数プロセスにまたがり連携されているものの全体の生産性を下げている要因は常に1つのプロセスです。
ボトルネックになっているプロセスを特定し、手を打たなければ全体の生産性は上がりません。
各プロセスの改善がうまくいったとしても、必ずしも全体の収益向上につながるわけではないのです。

このことをイメージしやすくするため、まずは究極の理想状態を考えてみましょう。
それは、自サービスを利用する可能性がある顧客が全て自サービスを利用し(シェアを100%取れており)、かつ自サービス利用をする可能性のない顧客は集客していない(無駄に集客して広告宣伝費や手間をかけない)という図1のような状態でしょう。

themodel事業TOBE-1

もちろん、図1は現実的ではありません。
実際には競合他社が存在しシェアを100%にすることはできませんし、自社の顧客になりえないリードを集客することはふつうです。
そこで図2のような現実的理想状況を目指していきます。

themodel事業TOBE-2

ただし図2も通常実現は困難で、現実的には図3のように取りこぼしや取りすぎが発生しているのが普通です。

themodel事業TOBE-3

図3の現実状況から、図2の理想状態に近づけるためには
  1. 取りこぼしをなくす
  2. キャパシティの無駄使いをなくす
の2点を進めていく必要があります。

後者のキャパシティの無駄使いは受注見込のない顧客を送客することで発生します。
無駄な送客が問題になるのは、後工程の生産性悪化によりコストが増加するからです。
さらに無駄な送客につながるリードを広告宣伝費をかけて集客している場合はより収益性が悪化します。
そのためキャパシティを無駄使いしている場合は、
  • 受注見込のない顧客を集客しない(特に広告宣伝費を投下しない)
  • 受注見込のない顧客を送客しない
という対策を実施していく必要があります。
一方で取りこぼしがボトルネックになっている場合後工程の生産性(送客率や受注率)を高めていく必要があります。
まず考えられるのは人員(キャパシティ)の不足です。

見込顧客の集客量が十分あるのに対し、対応する人員が足りない場合機会損失となるため採用等により人員不足を解消すべきです。
ただし、上述した無駄な送客に対応する形で人員追加した場合固定費が増加し収益性が下がるばかりか一人あたりの売上が下がり既存メンバーのモチベーション低下にもつながるため本当にキャパシティにボトルネックがあるのは慎重に吟味すべきでしょう。
そして、採用したからといってすぐに1人前として換算できるわけではありません。
立ち上がりにかかる期間を計算に入れた上で計画をたてたほうがよいでしょう。

また、キャパシティ不足の解消については配置転換も視野に入れるべきです。
例えばフィールドセールスを顧客セグメントやエリアごとにチーム編成しており、ある特定の顧客セグメントやエリアでキャパシティ不足が起きている場合キャパシティに余裕のあるチームが受け持ちを増やすことでボトルネックは解消方向に向かいます。
もちろん別セグメントやエリアに慣れるための育成が必要であるなど簡単ではありませんが、手段としては検討すべきです。
なお、キャパシティが解消するまでは各工程間で送客する顧客の量・質(セグメント)をコントロールし後工程の生産性を下げないための方策を講じておきましょう。
この連携については3章で記載します。
インサイドセールスの場合はリードによって力のかけ具合を調整しやすいという特徴があります。
フィールドセールスの場合発生した商談を勝手にキャンセルするなどは困難ですが、インサイドセールスはリードによっては省エネルギーで対応するということが比較的やりやすいです。

キャパシティに問題がない場合、インサイドセールスの送客率かフィールドセールスの受注率がボトルネックとなります。
受注(又は送客)できるかはセールス担当者のスキルやモチベーション、サービスの価格や特性、ブランドイメージなど総合的な競合他社との優劣で決まります。

受注(又は送客)率を上げるには競合負けしないようポジショニングや差別化の見直し、セグメントごとのオペレーション見直しなどを検討していく必要があります。
セグメントについては顧客の属性(BtoBの場合企業規模や業種業態)や、エリアなどが考えられます。
特定のセグメントについては競合負けしやすく、生産性を落とすため注力しないという判断もありえるでしょう。
その分、勝率のよいセグメントに注力することで全体の生産性が上がることも多いです。
セグメントは、セグメント間で差分の理由が比較でき有効な仮説を生み出せるような切り方をしていきます。
これは一定のセンスと経験が必要で簡単な作業ではない、ということは認識しておいたほうがよいでしょう。

どのセグメントに注力すべきかはセグメントのボリューム、シェアを伸ばせるポテンシャル、実現難易度で決まります。
勝率のよいセグメントの勝率をさらに上げることは難易度が低いようにも感じますが、シェア増加のポテンシャルは小さい可能性が高いです。
逆に現在勝率の悪いセグメントの勝率を高めることができると、難易度が高い分シェア増加のポテンシャルは大きいでしょう。
例えば図4のように優先度を判断していくことになりますが何を重視するかの判断軸は時間軸(短期的に成果をあげたいなど)などおかれている状況によって変わります。

セグメント優先度

シェアを高めるターゲットとしたセグメントに対してはサービス改善により競合優位性を作る(あるいは負けている部分を埋める)、セールスオペレーションの改善により歩留まりを高めるなどが具体的な改善手段となります。
一点、注意点としてはセールス人員のキャパシティを所与のものとして受注(又は送客)率をボトルネックととらえることです。
場合によってはセールス人員を過剰に配置しているという可能性もあるため、収益性低下の要因が過剰配置にある場合配置転換等の施策も検討が必要です。
現状が過剰配置になっているかは過去からの生産性推移を時系列でみていくことにより判断します。

重要なことは、どこのプロセスがボトルネックになっているかをつねにモニタリングしておき、ボトルネックに対処できるようにしておくことです。
そのためには以下の指標をモニタリングするようにしておくとよいでしょう。
  • マーケティング(集客)の生産性推移(広告宣伝費に対する有効リード獲得数など)
  • インサイドセールスのキャパシティ(受け入れ可能数)と有効リード数(実際の送客数)
  • インサイドセールスのの生産性推移(1人あたり送客量など)
  • フィールドセールスのキャパシティ(受け入れ可能数)と実際の送客数
  • フィールドセールスの生産性推移(1人あたり受注売上推移など)

2.各プロセスの改善

ボトルネックはある特定のプロセスが全体の生産性を下げている状態であるため特定し解消すべきプロセスは1つです。
ただし各プロセスのOPS改善を進めておくのも必要なことです。
事業責任者はボトルネックの特定と解消に注力しながら、プロセスの責任者が各プロセスのOPS改善を進めていけるとよいでしょう。

マーケティング(集客)

マーケティング(集客)の役割はサービスを利用する可能性のある顧客を集客することです。
ただしここに時間軸の考え方が加わります。
すぐにサービス利用開始する顧客だけでなく、将来的に利用する顧客も存在します。
*利用は自社サービスだけでなく、競合他社の代替サービスも含みます。

また、顧客によってサービス利用する可能性には差があります。
ほぼ確実に利用する顧客・利用する可能性が一定ある顧客・利用する可能性がほぼない(全くない)顧客などです。
マーケティング部門は自分たちが集客している顧客の分類を認識し、戦略をたて運用していく必要があります。

リードの判定

図5のようにインサイドセールスに送客すべき有効リードを判断し、有効リードが1件あたりどれくらいの費用で集客できているか、また有効リードが1件あたりいくらの売上を期待できるかを計算し運用をしていきます。
こういった運用を行うためにはリスト獲得時にアンケート等を用い、分類可能な設計にしておく必要があります。

利用意向の低いリストは後工程に送客しても売上にきわめてつながりにくく、生産性を下げて利益率が低下するため送客すべきではありません。
また、可能な限り無効なリードに対する広告宣伝費投下を抑制していく必要があります。

図5の時間軸で、「将来的に利用する」という顧客に対してはインサイドセールスに送客できるタイミングが来るまでプールしておく(待つ)必要があります。
この時間軸管理は送客可能タイミングになったかというフラグをいかに検知するかが重要です。
  • インサイドセールスで初回接触は実施し、顧客と再接触時期を握ったうえで時間軸管理
  • Line公式アカウント等見込客をプールしておきやすいツールを活用
  • MAツールで定期的に接触し最新ステータス状況を確認
などのやり方が考えられるので、事業にあわせて最もよいやり方を選択しましょう。

理論的には新たに有効リードを1件追加で集客する費用が有効リードから期待できる売上を下回っている場合、利益が出るため追加集客すべき、という判断になります。
ただし、あくまでこれは粗利(期待売上から広告宣伝費のみ引いたもの)であるため厳密に計算可能であれば有効リードから売上を作るための人件費等も考慮した上で利益が出る水準を定めておけるとベストです。
できる限り厳密に計算したいところですが、簡便的に期待売上の半分まで広告宣伝費を使ってもよい等の決めの水準をおいて運用することもありえます。

最も気を付けたいのは、有効リードの概念なく集客数をKPIにして運用をまわすことです。
これは無駄に広告宣伝費がかかるだけでなく、無効リード含めた集客量にあわせて後工程の人員を増やす意思決定に繋がりやすく事業収益性の悪化をまねく要因になるため注意が必要です。

インサイドセールス

インサイドセールスの役割を、セールスの生産性を高めるフィルタリング機能だとする意見もありますが決してそれだけではありません。
そういった側面もあるのは事実ですが、見込が低い顧客のフィルタリングはマーケティングの工程で済ましておくべきです。

インサイドセールスの主な役割としては自社サービスの利用意向度を高めながら顧客を次のステップに進めることです。
利用意向度が十分に高まっていない状態で次のステップに進めることもクロージングテクニックによっては可能な場合があります。
通常、次のステップにどれだけ進められたか(送客できたか)がIS担当者のKPIとなるためクロージングテクニックによりKPIを担保する動きになりがちです。

しかし利用意向度が低い状態で次のステップに進めた場合最終的に受注になる可能性が低く、全体の生産性の観点でマイナスになるため送客内容のクオリティチェックの仕組みを入れておくと同時に、評価制度に送客クオリティの観点も含めるべきでしょう。
クオリティチェックは可能であれば顧客に聞くのが一番早く正確です。
ストレートにISの工程を経て利用意向度が上がったかをアンケートするのも手です。
それが難しいようであれば送客した顧客の後工程展開率をモニタリングするか録音したトークをサンプリングチェックをするなどの方法も考えらます。

次に利用意向度をどう高めるかですが、これは顧客の状態/属性によって異なります。
集客時の利用意向度によってISで担うべきことも変わってきます。
集客時の利用意向度が低い場合は顧客が問題を顕在化していない、あるいは競合の代替サービスのほうが魅力度が高いと考えている状態のため、自社サービスの利用意向度を高めるコミュニケーションをしていかなければなりません。

どうコミュニケーションをすれば利用意向度が高まるかは顧客の属性によって方針が分類できるので、セグメント化したうえでセグメントごとのトークスクリプトを考えていくとよいでしょう。
スクリプトの作り方としては、SPIN話法をフレームワークにして作成することを個人的には推奨します。

また、チームとして成果を高める場合大きな変数になるのが人員配置です。
どのリストを誰が担当するかで大きくパフォーマンスが変わります。
ざっくりとハイパフォーマが送客難易度の低いリストを担当するか、送客難易度の高いリストを担当するかで方針が分かれます。

チームとして成熟していない状況、あるいは配置方針を明確に決めていない場合ハイパフォーマーに難易度の低いリストを寄せることで短期的にチーム成果が上がることがあります。
ただし、この方針だとそれ以上チームとしての成長が望めないためハイパフォーマーは難易度の高いリストを攻略しながらそれ以外のメンバーが難易度の低いリストで取りこぼさないよう育成していく形を目指すべきでしょう。

最後に、特にtoC向け商材において電話をメインチャネルにして営業している場合通電率が重要な変数となります。
通電率においてはリストの鮮度が命です。
集客してから一定時間が経過すると一気に通電率が落ちるため、集客後可能であれば5分、理想的には2分以内に荷電したいところです。

鮮度が落ちたあとはいつ、どのくらいコールをするかという設計をすることになりますが私の経験則では2営業日内に通電しなかったリストはメールやSMSなど別のチャネルにスイッチしたほうが良いです。
3営業日以降経過すると、1荷電した際の通電期待値があまりにも低くなるため工数負けしやすいためです。

フィールドセールス

フィールドセールスの役割は顧客を受注フェーズまで進めることです。
インサイドセールスを置いているため、フィールドセールスは商談に集中することができます。
つまりフィールドセールスとして生産性をあげるために改善が必要なボトルネック工程は、あたりまえですが商談後のプロセスということになります。

商談後のプロセスでボトルネックになる工程は顧客のニーズ喚起にあると考えてよいでしょう。
顧客にとっては現状を維持する選択肢もあれば競合を選択する選択肢もあります。

そんな中、自身の提案が最も魅力的だと思ってもらえるかでフィールドセールスの生産性は決まります。
ニーズ喚起をするには顧客ごとの深い理解とそれに基づくソリューションの提案が不可欠です。

ソリューションの提案事態は顧客の深い理解があれば難易度自体は高くありません。
そうなると、肝は顧客理解になります。
なかでも、もっとも理解が深まりその後の活動を決めるのは初回の接触(ヒアリング)です。
間違ってもいきなりサービス説明(提案)に入るのではなく、ヒアリングを中心に商談を構成し理解を深めるようにつとめましょう。

では、何を理解すればよいのでしょうか。
これは顧客のニーズに尽きます。
BtoBであればおおむねニーズは以下に集約されます。
  • 売上を上げたい
  • コストを下げたい
  • 業務削減したい
  • 認知を上げたい/ブランディングしたい
なぜ現状このニーズが満たされていないか課題を理解し、自社サービスがどう解決に貢献できるかを論理構築していきます。

この時、今なぜその課題が重要であるのか、そしてその解消方法について顧客がほとんどイメージできていないということがよくあります。
イメージの薄い課題と解消方法を明確に認識してもらうことができれば顧客にとっても自社にとっても有益な商談となります。
ここにセールスの介在価値があるのです。

後は障害になる要素を把握し、排除しておけるとなおよいでしょう。
たとえば実績が出ないと本格導入にふみきれないという場合小さく実験し、結果を検証するプランから提案してみるなどの方法も考えられます。

また、劣勢な状態にある顧客(提案のステップが前に進められていない顧客)の管理も生産性に差が出る部分でしょう。
この場合、深い顧客理解をした結果競合サービス優位であるのか、顧客理解に問題があるかで対処が異なります。
前者の場合残念ながら現状のサービス特性では競合に劣後する状態であるためサービスを強化していく必要があり、設計チームへフィードバックすることが望ましいです。
後者の場合行動量や顧客管理の仕方、ヒアリング方法など問題個所がいくつか考えるため問題を特定し個別に対応していく必要があります。

チーム(事業)としても個人としても勝ちパターンを広げていくスタンスが重要です。
ある顧客セグメントにおいて顧客が望んでいることは何か、競合に対し相対的に優位/劣後している部分は何か、組織と個人で共通のコンセンサスがある状態が理想です。
チームとしてパターン学習を進めていくことで成果を高めていくのです。

次に、セールス組織全体として生産性を上げる観点で考えます。
IS同様、ハイパフォーマがどの顧客を担当するかという論点がありますが、これはISの項で記載したことと考え方は同じです。
共通する考え方としては組織としてケイパビリティを増やすということです。
ケイパビリティを増やすとは
  1. 人員増に依らず受け入れ可能な送客量を増やす
  2. これまで勝率が低かったセグメントの勝率を上げる
ということです。
1は難易度こそ高いものの、セールス担当を多能工化するという方向が手段としてあります。
多能工化できていない場合特定の顧客セグメント(属性やエリア)で送客キャップがかかりやすく通常集客工程でこのキャップを予測しながら集客コントロールすることは難しいため機会損失が発生してしまいます。
組織としてパターン学習が体系化されていれば多能工化の難易度は下がるはずです。
他にも対面営業からオンラインセールスへの切り替えを検討してみるなどコミュニケーション手段を変更することで生産性を高める方法も考えられます。

2は勝率の高いセールスマンの勝ちパタンを横展開する、という手法が代表的でしょう。
ハイパフォーマーの商談に同席する機会を仕組みとして作る、ハイパフォーマーのロープレを撮影し共有するなどの方法が考えられます。
セールスマンに依らず勝率が低い場合商品性の問題である可能性もあるためその場合設計チームをまきこんでの組織的攻略が必要になります。

カスタマーサクセス

カスタマーサクセスについても簡単にふれておきます。
独占状態になっているビジネスを除けば「顧客への提供価値>顧客から得る対価」という状態でないビジネスは永続しません。

また提供価値と対価の差分が大きいほど顧客のロイヤリティが高まります。
企業としては値上げの選択含め顧客ロイヤルティをどこまでキャッシュに転換するかが意思決定のポイントとなります。

仮にビジネスモデルがサブスクリプション型ではなく売り切り型であったとしても「提供価値>顧客から得る対価」になっているかは強く意識しておかなければなりません。
短期的には「提供価値<顧客から得る対価」によってキャッシュを手にいれることができても長い目でみれば評判の悪化が収益の悪化に帰結するからです。

提供価値を高めるには商品性が良いことは必要ですがそれだけでは不十分です。
なぜなら全ての顧客がサービスを使いこなし十分に提供価値を享受できるとは限らないからです。
一定複雑なサービスであれば、独力でフルに機能を使いこなせる顧客は1-2割程度ではないでしょうか。

よってサービスを使いこなすサポートを実施し、提供価値を高める活動は有益だといえます。
特にサービス利用開始直後は最もサポートのレバレッジがきくタイミングであり利用開始初期に手厚くサポートをしたうえで顧客が独力で運用できる状態までもっていけることが理想でしょう。
サブスクリプション型のビジネスにおいては収益面でもカスタマーサクセスの重要性が高いです。
退会率を下げ、既存顧客からの売上拡大を戦略的に進めていかなければいずれ成長の頭打ちがやってくるからです。

カスタマーサクセスの難しい面では、リソースの使い方でしょう。
リソースが無限にある場合は全ての顧客を最大限フォローしサービス活用度を最大化していくことができますが、それは現実的ではありません。
つまり、カスタマーサクセスとして生産性を高めていく姿勢が求められますが重要な観点としては
  1. タイミング
  2. 顧客規模
  3. 支援工数削減
があげられます。
タイミングについては先述したサービス利用開始直後がもっともレバレッジポイントとなりますが他にもサービス退会の可能性を示唆する挙動が見られる、登録ユーザ数が一定に達したなど注力して支援すべきタイミングは考えられます。
顧客規模については売上規模が大きく、退会時のマイナスインパクトが大きい顧客を優先して支援するという考え方です。
いただいている対価が大きい分フォローも手厚くするという自然な考え方でもあります。

支援工数削減についてはUI/UXの改善、よくある質問をFAQにまとめる、コミュニケーション手段を見直す(電話からチャットへ、等)などが挙げられます。
また、退会を防止するコミュニケーションを行う、アップセルやクロスセルを実施する等事業収益に直結する業務はセールス的な側面が強いためカスタマーサクセス内でも別チームで分けるか、セールスチーム/ISチームが担当するという選択肢を検討したほうがよいでしょう。

3.プロセス間連携

事業として伸ばしていくためにボトルネックの特定と解消および各プロセスOPS改善を進めながらも定常的な運用として、プロセス間の連携をうまくすすめていく必要があります。

まず、後工程のセールスキャパシティに対応して送客量をコントロールする運用を構築します。
後工程のキャパシティが不足している場合、供給量を制限する必要がありますが、まんべんなく制限しては機会損失が大きくなってしまいます。
そのため受注可能性の高い顧客を優先して送客をする必要があります。
したがって、各工程間(特にインサイドセールスとフィールドセールス間)においてセグメントごとの受注可能性について共通認識を持つ必要があります。
受注可能性の高い顧客や残キャパシティについては後工程に位置するチームから積極的に情報提供すると、連携がうまくいきやすいでしょう。
受注可能性の高低(セグメントの定義)はそう頻繁に変わるものではないので、プロセス間で残キャパシティがどういう状態であればどのセグメントまで送客する、というルールが設定できていればオペレーションを円滑にまわしやすいです。
ルールは以下のようなイメージで設定します。
(セグメントAが最も受注しやすく、B→Cと受注しにくくなる前提。)

送客条件ルールの設定

供給制限時、マーケティングやインサイドセールスでは送客可能になる状態まで顧客をプール(あるいはナーチャリング)するということも必要になります。
重要な点としてボトルネックは常にどこかの工程で存在しているものなので、供給制限をしなければならない状況が常に起こりうるということです。
つまり、各チームが最大限努力して送客量を最大化していればそれでよい、というわけではないということです。
また、送客される顧客の質は状況によって変化するということでもあります。
この点を各チームが認識しておかないと全体最適は実現しません。
また、各チームが認識しているだけでなくメンバーの評価制度がこの実態にあわせたものになっていないと機能しません。
評価制度については次の章で詳細に記載します。

セグメントごとの送客ルールを設定することで、プロセス間で共通のセグメント認識をもつようになります。
共通のセグメント認識があれば他プロセスでうまくいった事例を展開しやすく、セグメント攻略のために作成したクリエイティブを共有しあい使用していくという連携も実現しやすくなっていきます。

4.組織体制と評価制度

組織によってはマーケティング部門やセールス部門などいわゆる機能組織として横串で各事業を支援している体制もあります。
しかし、この場合どうしても各機能ごとに成果を最大化するという方向にいきやすく、また後工程との情報連携も薄くなりやすいためチーム間連携により全体最適を目指すというのは困難になります。
そのため、原則事業の配下にマーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスの各プロセス(チーム)を所属させることを基本に考えたほうがよいでしょう。
機能単位での強化は全社的に有識者のレビューを設けるなど別の手段を検討することで担保します。

また先述した通りTHE MODEL的なオペレーションを取っている場合各プロセスがそれぞれ量を最大化すれば全体最適につながる訳ではなく、送客する量/質をコントロールする必要があります。
送客のコントロールが必要になる前提で、評価制度上念頭においておかなければならない点として下記2点が存在します。
  1. 供給制限をする場面があり常に送客量最大化が最善になる訳ではない
  2. 送客される顧客の質は変動する
よって、評価設計として各プロセスで共通してやってはならないのが
  • 送客量を個人評価の主要素とする
  • 送客された顧客からの展開率を個人評価の主要素とする
という2点です。 KPIとしてモニタリングはしたほうがよいですが、これだけで個人評価を決めていけません。
送客量を個人評価の主要素としてしまうと、後工程のキャパシティを低見込の顧客でうめてしまい全体最適性が担保されなくなるからです。
また、送客された顧客の展開率を個人評価の主要素としてしまうと柔軟に送客する顧客の質を変動させられなくなるからです(厳密にはオペレーションとしては可能ですが、現場の理解が浸透していない場合デモチベーションにつながります)。
ただしセグメントごとの展開のしやすさを加味したうえで評価指標とするのであれば可能です。

送客量や展開率でデジタルに評価できないとすると、基本的には能力で評価をするという設計が必要になります。
もちろん能力があるのであれば成果は出るという前提はあるので、KPIに置いている指標を参考にしながら評価をしていくことにはなります。
能力の評価は具体事例で見ていかないと判断がつかないため評価者はその工程で成果をあげた経験者をおいたほうがよいでしょう。
たとえばインサイドセールスであれば有効リードのうち利用意向度の低い顧客を送客できた事例を実際に評価者が録音データなどをもとに確認していくことで保有スキルを評価していくことができます。
また、全体最適を実現するために各メンバーが求められていることを理解し、その実現のために行動を徹底できているかという観点も評価に組み込んでおくことが望ましいでしょう。

補足として、これからインサイドセールスチームを立ち上げるというフェーズの場合立ち上げリーダーの選定はもっとも気を付けるべき点です。
その後の組織全体のパフォーマンスを運命づける人選になるからです。
もっとも成功確度が高いのはフィールドセールスチームのリーダーやエース格を据えることでしょう。
これには
  • セールスチームからの情報連携がスムーズにいきやすくなる
  • 送客コントロールのOPSが作りやすい
  • インサイドセールスメンバーの能力底上げや評価の仕組みを構築しやすい
などのメリットがあるからです。

5.最後に

最後までお読みいただきありがとうございました。

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