書籍「確率思考の戦略論」から学ぶ成功確率の高め方

「確率思考の戦略論」ってどのような本?

ビジネスの勝敗が何によって決まるかを数学的に証明し、本質に基づいて勝ち方(成功確率の高め方)を記載している本です。
あなたが戦略策定する立場にある場合、一読をおすすめいたします。

どのような人が読むべきか

戦略を構築する経営者、経営幹部、実務責任者

どのような内容か

コントロールできる領域に経営資源を集中させ、戦略の確率を事前に知り、成功確率を劇的に高める。

著者はどのような人物か

盛岡毅さん、株式会社刀代表取締役CEO。
1996年P&G入社、ブランドマネジャーとしても日本ヴィダルサスーンの黄金期を築いた後2004年P&G世界本社へ転籍。
北米パンテーンのブランドマネジャー、ヘアケアカテゴリー、アソシエイトマーケティングディレクター、ウエラジャパン副代表を経て2010年にUSJ入社。
2012年、同社CMO、執行役員、マーケティング本部長。
USJ再建に使命完了後、2017年、マーケティング精鋭集団株式会社刀を設立。

今西聖貴さん、株式会社刀シニアパートナー、インテリジェンス。
P&G入社後、日本の市場調査部で抜群の実績を上げたのち、P&G世界本社へ転籍。
160ヵ国を超える市場でビジネスを展開するP&Gの中枢において、世界各国にまたがって有効な需要予測モデルの開発、世界中の市場分析・売上予測をリードした、元P&Gの世界最高頭脳。
その後盛岡の招聘によりUSIにシニアアナリストとして入社。
ハリーポッターエリア導入の需要予測において高い精度でアテンダンス増を的中させ経済界を驚かせた。

市場構造の本質

さまざまな現象は、本質によって形づくられた構造から生まれてきます。
市場構造の本質さえ分かれば、その市場で勝つために戦略をどこに集中すべきか、それはなぜなのか明瞭に見えるようになります。

市場構造とはある商品カテゴリーにおける人々の意思と利害と行動が積みあがった全体としての業界の仕組みです。
市場構造を決定づけている本質は、消費者のプレファレンス(簡単ににいえば好みのことで、主にブランド・エクイティー、価格、製品パフォーマンスの3つで決定される)です。
なぜなら、全てのプレイヤーは最強の存在である最終購買者(消費者)に従わざるをえないからです。

我々が奪い合っているのは消費者のプレファレンスそのものです。

市場の売上=述べ購入回数×1購入あたりの平均購入個数×平均単価

このうち述べ購入回数におけるシェアを競合とうばいあっておりこのシェアは相対的なプレファレンスできまります。
どれくらいの割合の人がそのカテゴリーの商品を購入するか、そのカテゴリーの商品を何回購入するかもそのカテゴリーに対する消費者のプレファレンスで決まります。

(大日向補足)
我々はいま、自由競争市場の中でビジネスを営んでいます。
自由競争市場下では消費者が最終的に意思決定し、価格が決まり市場ができるのです。
その中では、消費者から強い支持を受けたプレイヤーがシェアを伸ばすでしょう。
いわれてみれば当たり前のようにも感じるかもしれませんが、日ごろ業務を行う中で消費者のプレファレンスを獲得するという思考・行動をどこまで取れているでしょうか。
戦略・戦術は消費者のプレファレンスを獲得するためにあるということを忘れないようにしたいものです。

戦略の本質

ビジネスの売上は消費者のプレファレンスで最大ポテンシャルが定まります。
その最大ポテンシャルが認知と配荷で制限され現実のビジネスの結果が決まります。

市場規模が一定とすると取れる手段は
  • プレファレンスを高める
  • 認知を高める
  • 配荷を高める
の3つしかありません。
プレファレンスを上げることで成長させることをブランドの質的な成長とよび、認知や配荷を上げることで成長させることをブランドの量的な成長と呼びます。

●認知の伸びしろを探す
認知率の伸びに対してビジネスはあるレベルまでは直線的な関係で伸長します。
認知率を図る指標としてはAidedAwareness(エイディッドアウェアネス)とUnaidedAwareness(アンエイディッドアウェアネス)の2つが代表的です。
前者は〇〇を知っていますか?という質問によって得られる認知率で、後者は△△として思い浮かぶブランドは何ですか?という質問によって得られる認知率です。
マーケターとしては消費者の買ってもよいと思っているいくつかのブランド群に入っているかどうかが重要です。
アンエイディッドアウェアネスの質問で最初に名前にあげられる第一、第二ブランド想起率も重要です。
圧倒的なNo1ブランドでもない限り、認知のどこかに伸びしろはります。
とはいえ費用に対する認知伸長の効果は逓減していくので費用対効果を考えたときに認知向上の戦略をとるか考える必要があります。

●配荷の伸びしろを探す
配荷率とは市場にいる何%の消費者がその商品を買おうと思えば物理的に買える状態にあるかという指標です。
自社ブランドを取り扱ってくれている店舗数の割合をストアカウント配荷率といい、店舗の売り上げ規模や商品カテゴリーの売り上げ規模でウエイトをかけて修正したビジネスウエイト配荷率も指標としてよく使われます。
小売店が棚に商品をおいてくれるかは自社ブランドがそれぞれの小売店にとって役割を果たせているかが重要です。
売上金額のボリュームで貢献するのか、売上単価を引き上げることで貢献するのか、利益率や利益額で貢献するのか、自社ブランドの小売店における役割を競合のポジショニングに比して明確にします。
そうして配荷の面積を増やすことでビジネスは直線的にのびていきます。
配荷の拡大について革新の例としてはコカ・コーラがあげられます。
コカ・コーラは自社の業務をブランディングと原液の販売に集中し現地での生産と販売を担うボトラーをフランチャイズで募集しました。
結果消費者により近いところで生産が可能になり新鮮な商品がとどけることができるうえに流通システム構築に必要な経営資源を他社に依存できました。

●プレファレンスの伸びしろを探す
プレファレンスを伸ばすということは、自社ブランドが消費者1人あたり何回選ばれるかという数(何回でも投票できる選挙の投票数のようなイメージ)を増やすということです。
投票数を増やすには新規に購入する顧客を増やす水平拡大と既存顧客の購入回数を増やす垂直拡大が考えられます。
筆者の経験上は水平拡大のほうが成功する場合が多いです。
市場全体のプレファレンスを水平方向へより多く獲得していくことが自社ブランドの基本戦略になることが多いです。
自社ブランドの魅力を高めることによって新たな消費者を獲得し、市場全体における自社ブランドへの投票数を増やしていきます。

そのために消費者の中で誰をターゲットとして狙うのか?
注意点は新規顧客を獲得しようとして増強したプレファレンスが既存顧客のプレファレンスを棄損しないようにすることです。
消費者を区切ってターゲティングすることは、投票数を増やすためであって決して自社ブランドの範囲を狭めるためではありません。
あくまでの自社ブランドの市場全体における魅力度(プレファレンス)を拡大するのが目的で、ターゲティングはそのための1つの手段に過ぎないのです。
ターゲティングは自社ブランドへの投票数を増やすためにやっているという自覚をもつことでマーケターは自社ブランドにとってのプレファレンスの伸びしろを正しく見つけ出していくことができるでしょう。

戦略はどう作るのか

戦略づくりは「つくる」というよりもむしろ「さがす」という感覚です。
戦略は必ずそこにあるものだからです。
目的を達成するために確率の高い道筋がどこかにあるのであって、誰も気が付いていないその道筋を探して見つけだすという意識に近いです。
探す際はゴールからスタートに向かって逆算して探していきます。
我々がフォーカスすべきは競合に対して相対的にプレファレンス(サイコロの自社ブランドの目が出る割合)を上げることです。

1)ブランドエクイティについて
ブランドエクイティはすべてに優先してプレファレンスを支配する最重要な要素です。
製品パフォーマンスも価格もゆくゆくは消費者の頭の中でブランドエクイティーへとそしゃくされ定着していきます。
ブランドエクイティは競合との相対て決まるため、自社ブランドのポジショニングを知るところから始める必要があります。
ブランドエクイティの実測値と消費者のプレファレンスの相関関係を分析し、自社への投票数を増やすために重要なエクイティーが何であるかを理解します。
ただし競合がそのエクイティーを強固に所有している場合強奪するのは簡単ではありません。

そこでよくやるのは差別化です。
たとえば東京ディズニーリゾートに対しスリルライドをそろえて戦う富士急ハイランド。
夢と魔法の王国は自身のポジショニングゆえに絶叫パークを同質化してつぶすことが難しいです。
重要なのはポジショニングや差別化は市場全体から自社への投票数を増やすためにやっているという目的意識です。

2)製品パフォーマンスについて
製品機能のパフォーマンスの重要性はカテゴリーによって大きく異なります。
たとえば自動車や家電、薬や洗剤など機能性が重視されるカテゴリーにおいては製品パフォーマンスの占めるプレファレンスへの影響は絶大です。
反対にミネラルウォーターや化粧品などは製品パフォーマンスの割合は小さくなります。
また、リピートビジネスかトライアルビジネスかによっても重要性は異なります。
消費財や商品などリピートして購入を期待するビジネスは製品パフォーマンスが重要ですが、トライアルビジネスは売上の大半をトライアル(初回購入)に依存しているため製品パフォーマンスが重要度が下がります。
典型例は観光地の土産物屋やレストラン、ぼったくりバーなどでしょう。

製品パフォーマンスの優劣は顧客が決めることであり作り手のエゴで判断するものではありません。
消費者に使わせてみて、その反応を客観的に測定するシステムが必要です。
(製品テストは研究開発関係者だけにやらせてはいけません。
それは被告人と裁判官を同じ人間にやらせるようなものです)

3)価格について
価格を最終的に決めているのは消費者です。
消費者には常に買わないという選択や代替品を買うという選択があります。
特殊なラグジュアリーカテゴリーは例外として、価格を上げることはプレファレンスは下がります。
ただしきちんと利益の出る価格を設定し消費者を継続的に喜ばすための必要な原資を獲得し投資していくのは消費者と企業が値上げによる果実を共有していると考えることもできます。
一流のマーケターの仕事は値上げしながらも自社への投票数を増やすことです。
なぜならそれが企業の存続、消費者の幸福、地域経済の発展、どれをとってもより良い方向で導く正しいことだからです。

戦略とは明確な目的がないのであれば存在するものではありません。
企業のリーダーにとって、その目的設定こそが最初で最重要な仕事になります。
達成したい目的があるとき、次になすべきことはその目的が達成できているときの状況を想像力と数値を使って徹底的に考えことです。
目的に到達するために市場全体の中で新たにに獲得すべき投票数を明確にする、その票田として消費者ターゲットは誰を狙うのが正しいのか、必要なプレファレンスの増加を実現するドライバーはどれとどれが必要で、それらはどういう値になっていなくてはならないかを考えていきます。

戦略とは到達したい高い目的にたどりつくために組んでいく足場のようなものです。
今の自分にとって手の届きそうな目的や、現実味のない目的だけ掲げてたどり着く道筋が全く示されていないということのないようにしましょう。
どれだけ壁が高くても階段さうえ作れれば必ず登れるものです。

戦略の実行

人間は判断や意思決定をできるだけ避ける生き物であり、会社のために正しい意思決定をすることよりも自分が直面しているストレスから逃れることを優先しがちです。
例えば正しいと思ったことを相手に伝えてその方向で進めようとおもっていたあなたが相手といざ話してみると感情的で非常に強い反対にあい、気が付けば本来の目的とズレでしまった妥協案を自分の中で探し始めてしまうというのは典型例でしょう。

成功するためには成功する確率が高い戦略を見つけられ、そしてそれを選べるかということです。
情緒を配した成功確率の高い戦略を選ぶことで目的を達する可能性が上がります。
意思決定とは、目的のために正しいことを選ぶことであり笑う人と泣く人が必ず出てくるものです。
そして現状の組織を改革しようとすれば泣く人のほうが多いものです。
大多数が望むのは自己保存であり現状維持だからです。
全体の方向性を大きく変えるときにはとりわけ激しい痛みを覚悟しなくてはいけません。
その痛みを自分で背負うことができない人は、より大切な目的のために大切な別の何かを切り捨てることができません。
だから結局は何も変えることができないのです。
痛みを引き受けて矢面に立つ覚悟と能力のある人間がいるかどうか。
そのほんの一握りの人間のみをリーダーと呼ぶと思います。

問題はそれができる人間になりたいと思うかどうかです。
ついていくのも大変なことは多いが、そのほうが間違いなく痛くはないでしょう。
決めたり矢面に立つ当事者になるよりも斜に構えて文句を言ったり評論するほうが間違いなく楽です。
だから大多数はリーダーにならないし、なれないでしょう。
戦略がある程度正しいことは成功するための必要条件だが、それだけでは全く十分ではありません。
戦術的勝利がなければどれだけ優れた戦略でも絵にかいたもちになります。

戦略家は
  • 自分自身の時間をどこに集中して使えば戦果が最大化するか
  • 自分以外の人々をどこに集中させて使えば戦果が最大化するか
この2つを冷静に考える必要があります。
自分自身で戦術の最前線に出て槍働きをする必要はないが、現場を頻繁に視察し戦術の重要性を組織全体に浸透させ戦術局面に従事する人々の士気を高めてよい仕事をしてもらうことは重要です。
自身の価値への執念、熱量を現場に伝える。
熱を人に伝え、人の良い仕事をさせるのが戦略家の仕事です。
戦術の現場において、彼らの仕事が目的からズレている、あるいは期待値に達していない場合は冷酷な鬼にもならなくてはいけません。
決して妥協してはなりません。
なぜなら、目的に対して純粋に正しい選択をしないと勝つ確率が大幅に下がるからです。

会社というのは結局結果を出さないと部下や同僚の涙ぐましい努力に報いることができないし、結果がないと彼らを守ることもできません。
できる限りのあらゆる熱量を注ぎ込んでいき成功する確率(戦略+戦術)を高めましょう。
合理的に準備して、精神的に戦うのです。

マーケティングを機能させる組織

マーケティングの使命である「中長期的に売上と利益をあげるブランドを構築すること」を果たすために最も大切なのは市場全体における消費者のプレファレンスを獲得していくことです。
市場構造の本質が消費者のプレファレンスである以上、マーケティング組織が共有すべき最重要原則は「消費者視点である」ことです。
しかしながら部門の利害、経営者や作り手のエゴなど様々な事情によって会社全体の決断が消費者最適からずれることは珍しくありません。
会社というたくさんの人が集まっている集団の中では会社の利害と個人や部門の利害が自然状態では一致しません。
だからこそ部門間や個人間の利害やしがらみをぶった切ってでも消費者価値としてのベストを押し通す、強力な意思決定の仕組みを人為的に作る必要があります。
つくったものを売るのではなく売れるものをつくる会社になる必要があります。

また、マーケティング組織には意思決定と実行の主体となる強力なマーケターの他に、正しい意思決定を行う確率を高めるために不可欠な リサーチャーの存在が欠かせません。
マーケティング担当者にはどうしても主観による意思が入り込みます。
確率のランダム性を考慮すると意思決定の際の不確定な変数はできる限り合理的に減らせるほうがよいです。
消費者のプレファレンスを勝ち取っていく市場競争の中でマーケティングドリブンな組織を中長期で機能させるために欠かせない リサーチャーによって構成される市場調査部の編成について所見を述べます。
市場調査部の目的は以下3つに集約されます。
  • 企業のマーケティング活動に関する投資計画の作成および選択の判断に、適切な消費者視点の量的・質的情報を提供すること
  • 目的に対して現状を正しく客観的に把握できること、およびそれを正確に意思決定者に伝えること
  • 短期的・長期的マーケティングの計画及び投資における死角をなくすこと。
    死角にはリスクに関するものとチャンスに関するものの2つのタイプがある
市場調査部の最も大切な思想は真実を追求することです。
調査結果がたとえ社内における権力者にとって不都合な真実であった場合でもその内容を客観的にまとめて真実を希求する姿勢をくずしてはいけません。
市場調査組織の命令系統としてはマーケティングに関する決断を下す最終責任者にレポートすべきで、あまり人は部門を介するべきではありません。
情報が途中で意図的にゆがめられる可能性や都合の悪い情報が意思決定者の耳に入るタイミングが遅れるようになるからです。
市場調査部の評価については上司であるマーケティングの最終責任者が主観で評価を下せばよいです。
大事なのはマーケティングの最終責任者と市場調査部の部門長が利益を共有している点です。
マーケティングの最終責任者の成功は、市場調査部の部門長の成功なのです。
また、市場調査部の構成員の評価もマーケティング組織のビジネスパフォーマンスの結果に密接にリンクさせたうえで真実を追求することを評価システムとして担保すべく工夫することが必要です。

組織においては大前提として、完璧な組織はありません、つねに現実の要求に質的あるいは量的においつかないのが普通です。
結局現行戦力で勝つしかないのです。
上司として最大の仕事の1つは自分自身の認識を変え、組織の人的資源を増やすことです。
そのために部下1人1人の特徴に注目して理解し その特徴が強みとなる文脈を選んで力を発揮させます。
個ではなく組織として様々な能力を共有させて、消費者のプレファレンスを勝ち取るための戦略にのっとって何度も試行させ、組織システムとして機能するように経験を積ませていきます。
基本的な能力を備えたマーケティング組織は3-5年もあれば十分に構築可能だと考えます。

9E大日向の感想

事業がうまくいっている時、事業が伸びている時はたいていの傷は癒されメンバーの多くハッピーになります。
事業がうまくいっているということは、メンバーも成果が出ているということですし、その結果給与が上がったりもするでしょう。
反対に事業がうまくいっていない時、事業が縮小している時は逆のことがおきます。
なのでリーダーは成果にこだわり何としても事業を成長させる必要があるのです。
本書にもあった通り、そのためにはつらい決断をしなければならないこともあります。
ただ、将来的には事業をうまくいかせメンバーの多くにもハッピーになってもらうための決断でもあるのです。
しかしリーダーには迷いがあります。
なぜならつらい決断をしても、ほんとうに将来事業がうまくいくのは不確実だからです。

本書はそんなリーダーのために本質や数値を使って成功確率を上げる方法を記載してくれています。
この本を手に、多くのリーダーが成功確率を上げる方法という武器を携え事業の発展とメンバーのハッピーの総量を増やしていくことを願います。

本書はこちらから購入できます。