書籍「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」から学ぶ組織の生産性の高め方

「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」ってどのような本?

書籍「イシューからはじめよ」から学ぶ知的生産性の高め方では個人の知的生産性の高めかたについてご紹介しました。
こちらの書籍はあなたがマネジャーとして、組織全体の生産性を高める方法が提示されています。
1984年に発行された本をもとに書かれており時事的な例えは古いものもありますが内容は本質的で全マネジャーにおすすめしたい本です。

どのような人が読むべきか

ミドルマネジャー(中間管理職)として自分の組織のアウトプットを最大化したいと考えている人。

どのような内容か

あらゆる種類のミドルマネジャーがより生産的に働くことができるようにするための手法。

著者はどのような人物か

アンドリュー・S・グローブさん、1936年ハンガリーブタペスト生まれ。
1956年にハンガリーからアメリカに移住。インテル社の創設に参画し第一号の社員となる。
79年に社長に就任し98年にインテルCEOを辞任、2004年に会長から退く。
スタンフォード大学経営大学院で24年にわたって指導した。

マネジャーの役割とは

マネジャーの役割は、組織の生産性を最大化することです。
組織の生産性を最大化するには少ないインプットで最大のアウトプットを作る必要があります。

組織の生産性

少ないインプットで必要なアウトプットを作るにはリミッティング(制約的)ステップという考え方が有効です。
こちらは次章で詳しく説明します。
アウトプットを高める方法についてはどうでしょうか。
そもそもマネジャーとしてのアウトプットとは何でしょう?
それは、以下のように分解して表すことができます。

マネジャーのアウトプット = 自身の組織のアウトプット + 自身の影響力が及ぶ隣接諸組織のアウトプット

つまりマネジャーは自身の組織と隣接諸組織のアウトプットを最大化する必要があり、そのためには
  1. レバレッジの高い作業割合を増やしたり、レバレッジ自体を上げる
  2. 育成とモチベーション向上によりメンバーから最高の成果を引き出す
この2点が重要です。
詳しくは次節以降で見ていきましょう。

組織の生産性を最大化する方法

生産性最大化①リミッティング(制約的)ステップに注目する

リミッティング(制約的)ステップとは取りかかる作業の全体的な形を決める中心的なステップをさします。
単純な例ではレストランでトースト・ゆで卵・ホットコーヒーから構成されるモーニングセットを提供する作業においてのリミッティングステップはもっとも提供に時間のかかるゆで卵の提供です。

リミッティングステップ

ここで重要になるのは最も長い(あるいは最も困難な、最も要注意の、最も費用のかかる)ステップからプロセスを組みたて逆に考えていくということです。
最も不可欠なステップ(卵をゆでるのに必要な時間)を中心に流れを計画し、他の作業はそれぞれの処理時間に応じてずらし全体のプロセスを計画します。

リミッティングステップの考えは広く応用ができます。
例えば採用活用であれば最もお金がかかるマネジャー以上との採用面接がリミッティングステップとなるため、採用者ひとりあたりのこのプロセスの利用回数を上手に切り詰めることを考え全体の流れを設計していくとよいでしょう。

(大日向補足)
リミッティングステップを考えずとにかく量を追求した結果、膨大なコストがかかったりマンパワーで解決せざるを得ない業務設計になっていることがよくあります。
最終的に必要なアウトプットさえ確保すれば生産性は度外視、という考えではなくリミッティングステップを意識し生産性を高めることが重要です。


そして、マネジャーとしては必要なアウトプットの量と品質が担保されているかを図るインディケーター(指標)が必要です。
組織活動が複雑になると、どういった過程を経てアウトプットが生まれたかを完全に把握することが困難になりブラックボックス化します。
そこでアウトプットの量と品質を予測できるようなインディケーターを設定し、モニタリングしていきます。
こうすることで現在の組織活動が順調なのかについて把握し、必要に応じて手を打つことが可能になります。
例えば、以下のチャートは将来の事業傾向に対する感触をつかむのには最善の手段です。

スタッガーチャート

このチャートは毎月予測と実績が更新されていくため、いくつかの以前の予測と比較した当時・現在の予測情報が毎月わかるようになっています。
そのため単純な傾向を図るチャートを使用するより、将来の傾向予測が立てやすいのです。

(大日向補足)
インディケータ(KPIという表現のほうが馴染み深いかと思います)を図るうえでマトリクスのチャートは有用です。
特に時系列×時系列のデータを比較する際にその効果を発揮します。
たとえばN日に集客したリストがX日後に受注するというマトリクスを作成すれば集客したリストがどれくらいのリードタイムで売り上げに結び付くか予測をたてられるようになります。


生産性最大化②レバレッジの高い作業割合を増やしたり、レバレッジ自体を上げる

マネジャーのアウトプットは、以下の等式でも表すことができます。

マネジャーのアウトプット = L1×A1 + L2×A2 + L3×A3・・・

ここで、Aはマネジャーが遂行するアクティビティを指しLはそのレバレッジ(実行したときの効果)を指します。
アウトプットを最大化するには以下3つの方法があります。

1.活動遂行スピードをアップする
活動のスピードを上げる秘訣は日々のスケジュール管理です。
まず自身のスケジュールにリミッティングステップである業務を組み込みます。
それ以外で空き時間ができるはずなので、隙間時間にリミッティングステップ以外の業務を積極的にスケジュールに入れていきます。
しかし急な差し込みタスクが入ることもあるため、スケジュールが破たんしないよう多少の余裕は残しておきます。

隙間時間に入れる業務を常にもっておくには長期にわたってとりかかる生産性向上のためのプロジェクトをいくつかもっておくことがコツです。
こういった業務がないとスケジュールを埋めるために部下への余計な干渉に時間をつかいがちになってしまうでしょう。

(大日向補足)
私も以下のような簡易的なスケジュールをエクセルで作り毎朝今日やることを決めています。
何をいつまでに終わらせる必要があるかを意識するようになり、かつできる限りタスクを入れようという気になるため、結果としてアウトプット量が増加します。
簡単にできて間違いなく効果が出るのでおすすめです。

個人スケジュール

(スケジュール作成時は背景に色づけをせず、タスクが終わった都度背景を黄色にしています)


2.レバレッジの高い活動の割合を増やす
影響される人数×期間の面積が大きいほどレバレッジが高い活動といえます。
レバレッジにはプラスだけでなくマイナスもあります。
たとえば考課はその後の長い期間にわたってモチベーション向上になる事もあればダウンする事もありえます。
マイクロマネジメントは、部下が自分の責任範囲やできる範囲をせばめて考えてしまうようになるので長期的に見てマイナスレバレッジといえるでしょう。
権限委譲する業務は自分にとって慣れた業務を選択するとよいでしょう。
なぜならモニタリングせず完全に放任するのは職務放棄になってしまうため、適切にモニタリングできる業務を委譲したほうがよいからです。
また、タイミングによってレバレッジの高低が変わることがあります。
たとえば、退職遺留はできるだけ早いタイミングのほうが遺留できる可能性が高まります。

(大日向補足)
レバレッジの高いタスクを優先するという考え方は大変有効です。
なぜならマネジャーは自分の時間をどこに集中させるべきか、他のメンバーから最高の業績を引き出すにはどうすればよいかを考えることが仕事であり、そのタスクの優先順位付けとしてレバレッジの考え方が妥当だと思われるからです。
上記例として上がっていた退職遺留についても、戦術遂行上絶対に抜けられては困る人はとくに日ごろから注意を払っておくのもレバレッジを効かせた活動と言えるでしょう。


3.レバレッジを増加する
レバレッジの高いタスクの割合を高めるたけでなくレバレッジ自体を高めることもアウトプットを高める上で重要です。

(大日向補足)
たとえば、コミュニケーションツールの見直しなどはレバレッジを高める好例でしょう。
これまでメールしか使ってこなかった組織にslackやチャットワークなどのチャットツールを使うことで伝達範囲が広がり、同じタスク実行時のレバレッジが上がります

生産性最大化③育成とモチベーション向上によりメンバーから最高の成果を引き出す

リミッティングステップを意識してプロセスを設計したり、レバレッジの高いタスクに注力したとしてもチームの構成員たちが絶えず最善を尽くそうと努力しない限り全てが無益になります。
マネジャーは各人から最高の業績を引き出す必要があるのです。

人が仕事をしていないとき、その理由は能力がないか意欲がないかのどちらかです。
マネジャーはどうやって部下にやる気を起こさせればよいのでしょう。
このことばには何かを他人にさせるという含みがありますが、そういったことができるとは思えません。
モチベーションは人間の内部から発するものだからです。
そのため、マネジャーにできることはもともと動機づけのある人が活躍できる環境をつくることだけになります。

何が人に仕事をさせるかについてはマズローの理論がよりどころになります。
マズローは一連の欲求が階層的に並んでいるとし、下位の欲求が満たされるとその上の欲求がこれに代わるとしました。

マズローの欲求五段階説

生理的欲求・安全欲求・社会的欲求により会社に来させる事まではできます(給料をもらって生活ができ、会社の集団に所属する欲求を満たせるため)。
尊厳欲求は前もって決めた目標や達成レベルに到達すると切実感がなくなってしまいます。
例えば役員になることがゴールであった人がいざ役員になった瞬間やる気を失ってしまうというようなことがあります。
それに対し自己実現への欲求は努力分野を選びその中で個人として最善をつくしたいという欲求で行動に対する人の意欲は無限となります。
そこでマネジメントとしては自己実現欲求を助成するためになし遂げる可能性が五分五分というような目標を設定したり、アウトプットを評価し強調するような環境をつくる必要があります。

(大日向補足)
マズローの理論は下位のニーズが満たされた時に上位のニーズを満たしたいという欲求がうまれるため、自己実現欲求に向かってもらうには尊厳欲求(承認欲求)は常に満たしておく必要があります。
そのため、マネジャーとしてはメンバーを常に承認するという姿勢が重要だと思います。
また承認するだけでなく高い目標を設定し、成果志向の環境を作ることで自己実現欲求のエネルギーが適切に使われる環境を作ることが重要なのだと思います。


部下の能力を高める上では、部下の習熟度によってマネジメントのスタイルを調整することが重要です。
部下のタスク習熟度がまだ低い場合は「何を」「いつ」「どうして」を具体的に示します。
タスク習熟度が中くらいの場合は双方向通行的コミュニケーションをとり、お互いの判断力を重視します。
タスク習熟度が高い場合はマネジャーの関与度を最小限にし、目標を設定してモニターします。
どのマネジメントスタイルの価値が高いかなどで判断しないようにしましょう。
われわれが追求しているのは何が最も効果的かという点です。

次に、考課も部下の業績(良い面でも悪い面でも)に長い間影響する重要なタスクです。
考課は部下の業績を改善するために行うものであり、技能水準を高めるかあるいはモチベーションを強めるために行います。
査定はアウトプット(業績)から評価する必要があります。
ただし時間要素も考慮します(考課期間中にアウトプットのでないものは将来価値を現在価値に割り戻してウェイトをつける)。
アウトプットはいまいちだったがポテンシャルは高いので昇進させたい、というような可能性(ポテンシャル)の罠にはまらないよう気をつけましょう。
考課の文章は直前に部下に見せ上司からメッセージを受け取る状態を作らせたほうが効果的に伝わります。
率直に、客観的に、相手がちゃんとメッセージを受け取れているか反応を良くみながら伝えることが重要です。

9E大日向の感想

インテルという大企業の創業期から参画し、組織を拡大させてきた筆者の書籍ですのでとても示唆に富む内容です。
チームを率いるリーダーは必読だと思います。
個人的にリーダーとしてハイレバレッジなタスクは以下2つ
①解く価値の高い課題を見つけその解決に組織を注力させること
②メンバーの採用と育成
だと考えます。
特に②についてはマネジャーとして生産性の上げ方と習得し、メンバーの生産性向上のサポートをしていく必要があるでしょう。
マネジャーとしてメンバーの生産性向上のお手本になることが組織の成果を最大化するハイレバレッジな活動だと思います。

HIGH OUTPUT MANAGEMENTは こちらから購入できます。