書籍「イシューからはじめよ」から学ぶ知的生産性の高め方

「イシューからはじめよ」ってどのような本?

組織に依存せず生きていくためになぜ「個人の生産性向上」が必要なのかで生産性を高める重要性を書きましたが、具体的にどうすればよいか分からない方も多いと思います。
この本を読めば具体的な生産性の高め方について気付きが得られるはずです。
全ビジネスパーソンが読むべき名著だと思います。

どのような人が読むべきか

個人の知的生産性を高めたいと考えている全てのビジネスパーソン

どのような内容か

知的生産性を圧倒的に高めるための具体的な手順

著者はどのような人物か

安宅和人さん、慶應義塾大学環境情報学部教授、ヤフー株式会社CSO(チーフストラテジーオフィサー)、データサイエンティスト協会理事・スキル定義委員長。
東京大学大学院生物化学専攻にて修士課程修了後、マッキンゼー入社。
4年半の勤務後、イェール大学脳神経科学プログラムに入学。2001年春、学位取得(Ph.D.)。
ポスドクを経て2001年末マッキンゼー復帰に伴い帰国。2008年よりヤフー。
2012年7月よりCSO(現兼務)。
2016年春より慶応義塾大学SFCにてデータドリブン時代の基礎教養について教える。
2018年9月より現職。

なぜ多くの人は知的生産性が低いのか

多くの人は問題を解く価値のある必要性の高さを考えずとりあえず手あたりしだい問題を解いたり、インプットを集めてアウトプットを量産したりします。
その結果、価値の高いアウトプットになかなかたどり着かずに時間を無駄にしてしまいます。

効果的な知的生産性の高め方とは

まず問題を解く価値のある必要性の高さを見極める

生産性を高めるためには、まずイシュー度(問題を解く価値のある必要性の高さ)を見極めましょう。
解く価値の高い問題を決めてから解の質を上げていきます。
イシュー度が低いとその問題をどんなにあざやかに解いても受益者(顧客や評価者)から見て価値が低くなってしまいます。
すなわち頑張ってもむくわれない犬の道を歩むことになってしまうのです。

マトリックス分析例2

では、解く価値や必要性が高いとはどういった問題でしょうか。
それは、以下3条件を満たす問題です。

①本質的な選択肢である(白黒はっきりついた時、その後の動きに大きく影響を与える)
1つ目の条件は本質的な選択肢であることです。
例えば商品Aが売れないという課題がある場合、最初の解くべき大きな解の1つは商品力に問題があるか販売方法に問題があるかを決めることです。
どちらの問題であるとスタンスを取るかによってその後の戦略策定ポイントが大きく変わってくるためです。
他の例では、コンビニエンスストアチェーンによって全体の売上が下がっているという課題がある場合、店舗数が減っているのか1店舗あたりの売上が下がっているのかが最初に解くべき大きな解の1つになるでしょう。

②深い仮説がある
2つ目の条件は深い仮説があることです。
これまでの常識を覆したり新たな構造で説明することで深い仮説を作っていくことができます。

常識を覆すにはその分野に詳しい人へのインタビューが役立ちます。
その分野のエキスパートや現場の人に話を聞くことで、その分野に共有に信じられている常識を知ることができます。
こうしたある分野では共通して信じられている常識が反証されたとき、大きなインパクトを生み出せます。

例えば
  • 拡大していると思われている市場が、先行指標では大きく縮小している
  • より大きいと思われているセグメントAに対し、収益の視点ではセグメントBの方が大きい
  • 販売数中心で競争している市場だが、実は販売数のシェアが伸びるほど利益が減る
  • コア市場のシェアは拡大しているが、成長市場のシェアは縮小している
など常識を覆す仮説が証明できたとき、良いイシューとなります。

新しい構造で説明することで深い仮説を作ることもできます。
人が何かを理解するのは2つ以上の異なる既知の情報に新しいつながりを発見することだからです。
具体的には構造理解する上で以下4つのパターンが存在します。

●共通性の発見
2つ以上のものに、何らかの共通なことを見つけることです。
例えば「あの人はメキシコの建国の際に2つの対立陣営を束ねる大きな役割を果たした人です」より「あの人はメキシコにおける坂本龍馬です」と言われたほうがピンときます。
他にも、オフィス用プリンタとビル内エアコンは収益構造のしくみが同じと言われればどちらかを知っている人ならなるほど、と思えます。

●関係性の発見
複数の現象間に関係があることを見つけることです。
たちえば「ポールとジョンは親友でおおむね同じ行動をしている」「ジョンとリッチは対抗しており、まったく反対の行動をしている」ことを知っていればポールの行動を見ることでリッチが何をしているかが分かります。

●グルーピングの発見
検討対象を何らかのグループに分ける方法を見つけることです。
典型例はビジネスにおける「市場セグメンテーション」です。
市場を何らかの視点に基づいた軸で切り分け洞察を得ることで自社商品の現状分析や今後の予想がしやすくなります。

●ルールの発見
2つ以上のものに何らかの普遍的なしくみ・数量的な関係を見つけることです。
例えば「ガソリンの工業的な取引価格が上下すると10ヶ月遅れでサトウキビの農産品価格が同様に動く」といった決まったパターンが見えると構造的な気付きにつながります。

③答えを出せる
3つ目の条件は答えを出せることです。
本質的な選択肢で深い仮説があっても答えが出せない解では意味がありません。
典型的な例ではプライシングの問題があります。
複数企業がいる中で商品の値付けをどうすべきか、という問題は非常に難しく現在でも明確な方法(分析的にきっちり答えを出す方法)は存在しません。

これら3つの条件を満たしたイシュー度の高い問題をまず見つけることが重要なのです。

(大日向補足)
良いイシューを作る条件の部分がやや難解かと思いますので補足を入れます。
まず前提として良いイシューを作るのは非常に難しいです。
良いイシューを作る条件として
①本質的な選択肢
②深い仮説がある
③答えが出せる
の3つが上げられていますが、これは実は良い事業プランを作る条件とも合致しています。
どういう事かというと
本質的な選択肢 → その事業はそもそもやる価値のあるものなのか(マーケットサイズや今後のトレンド等から見て)
深い仮説がある → その事業に新規性(常識を覆したり、新たな発見)はあるのか、また新規性があるといえる根拠は何か
答えが出せる → やる価値があって新規性もあるとして実現は可能なのか
というように置き換えられるのです。

良い事業プランを作るには定量/定性両面でインプットを取り、分析し、思考をし続けることでようやく原型ができあがります。
つまりそれだけ難易度が高くリソースをつっこんでようやく良いイシューにぶつかる、ということなのです。
これが恐らく多くの方が何となく書いてあることは分かったけど実践しようとすると難しいと思われる理由なのだと思います。

次に解の質を上げる

良いイシューが見つかったその次に解の質を上げる事を考えます。
良いイシューでも受益者(顧客や評価者)が理解、納得できない場合結局価値がなくなってしまいます。
そのためまずはイシューをサブイシュー(答えを出せるサイズ)に分解し、それぞれに仮説を立てます。
サブイシューを出すことで部分ごとの仮説が明確になり、最終的に伝えたいメッセージが明確になります。

サブイシューに分解するときはダブりもモレもなく(MECE)、意味のある固まりで分解することが大切です。
一見難しいように聞こえるかもしれませんが、この解をとくときにはこう分解するとよいというフレームワークがいくつかあります。
例えば
  • Where・What・Howで分解
  • ビジネスシステム(技術システム→商品開発→調達・製造→マーケティング→販売)で分解
  • 3C(顧客・競合・自社)で分解
などです。
分解後はサブイシューをどう並べて伝えると、最終的に言いたいことが伝わりやすいかストーリーラインを組み立てます。
ストーリーラインには大きく2つの型があります。

●Whyの並びたて
最終的に言いたいメッセージについて理由や具体的なやり方を並列的に立ててメッセージをサポートします。 たとえば「案件Aに投資すべきだ」と言いたい場合、「なぜ案件Aに魅力があるのか」「なぜ案件Aをてがけるべきなのか」「なぜ案件Aをてがけることができるのか」というWhyを並び立てます。

●課題の確認、深堀、結論
○○が問題だという課題の確認をし、問題を解く上で見極める必要があるポイント(課題の深堀り)を提示し、その上で結論を出します。

ストーリができたら絵コンテを作成していきます。
ストーリーラインに対する必要な分析やそのアウトプットとしての図/表を1つ1つイメージしていくのです。
なお、分析の本質は比較であり、どういった軸で比較するかの軸設定が肝になります。
アウトプットのイメージベースで分析した結果、意味のある違いが表現できているかをチェックします。
意味のある違いは、差がある/変化がある/パターンがあるという点に現れます。

ストーリー、絵コンテともに実行した結果分析結果が想定通りになれば説得力のある説明ができると思えるような内容になったら実際に分析を進めていきます。
分析は重要度(これが証明されなければ全体のストーリーが崩れる、というようなもの)の高いものから実施します。
重要度が同じくらいであれば時間のかからないものから仕上げていくとよいでしょう。
分析結果が出たら報告書や論文などにまとめていきます。

この一連の流れを1週間で行う場合、以下のイメージになります。

▼月曜日
今本当に答えを出すべき問題を見極める。
▼火曜日
イシューをサブイシューに分解しストーリーラインを作る。
そしてストーリーを検証するために必要なアウトプットのイメージを描き分析方法を設計する。
▼水、木曜日
ストーリーの骨格を踏まえ段取りよく検証する。
▼金曜日
論拠と構造を磨きつつ、報告書や論文をまとめる。

これが犬の道を進むと以下になりアウトプットがいつまでたっても出ません。

▼月曜日
やり方がわからず途方にくれる
▼火曜日
まだ途方にくれている
▼水曜日
ひとまず役立ちそうな情報、資料をかき集める。
▼木曜日
引き続きかき集める
▼金曜日
山のような資料に埋もれ、再び途方にくれる

その差は歴然でしょう。
根性や労働時間の多さで勝負をするのではなくバリューのある仕事で勝負していきましょう。

(大日向補足)
解の質を上げるパートはかなり省略して書きました。
ただ実際にビジネスの現場においては解の質を上げることも非常に重要です。
どんなに良い意見も相手に理解されなければ実行されず、意味がありません。
論理は相手の理解を得るうえで大きな武器となるのです。
また、問題を解く作業も生産性の高い人/低い人で大きな差が出ます。
本書では解をスピーディーに品質高く出すやり方が記載されおり、解の質を上げるというパートに書面の7-8割が割かれています。
非常に示唆に富む内容となっていますので是非購入して読むことをおすすめ致します。

こちらから購入できます。

9E大日向の感想

やや本書の論点から外れた内容になるかもしれませんが、生産性の高い人はイシュー度の確認を受益者(顧客や評価者)と握り終わってから問題の解決に取り組む印象があります。
アウトプットを作りこんでから上長にレビューを依頼したものの、結局アウトプットしたものは使われずお倉入りになったり1からやり直しを命じられて時間を無駄にした、という経験は多くの人にあるのではないでしょうか。
これも犬の道をたどるとどうなるか、という分かりやすい例かもしれません。

個人の知的生産性を高めるには上述した1週間の過ごし方の例のようなインプット/アウトプットの仕方を何回も繰り返しとにかく経験を積んでいくしかありません。
イシュー度の見極めをせず努力を重ねるのは一時的な満足感は得られるかもしれませんが、成果が出ない/低いことが多く結果として評価もされず成長もしないなど報われないことになるため気を付けなければならない点だと思います。